加藤医師(専門研修管理委員長)

自己紹介をお願いします

友愛医療センターの副院長で、消化器内科部長、先端医療研究センター長および専門研修統括責任者を兼務しています。

医師になってから20年程、名古屋で大学の医局に在籍していましたが、マネジメントに興味を持ち、全く知らないところでこれに挑戦したいと思い、2010年に沖縄に来ました。

友愛医療センターの魅力について教えてください

新しいものを受け入れる包容力と、新たなことへのチャレンジを支援してくれるところです。病院というのは長年続いてきた慣習を変えることには抵抗があることが多く、なかなか実行できないという一面があります。しかし、当院では上層部が「良い」と思ったことに関して果敢にチャレンジさせてくれます。院内に設備の整ったCPC(Cell Processing Center)があり、再生医療(細胞シート等)に取り組んでいることもそのひとつです。こうした雰囲気は職員にとってやりがいにつながっていると感じています。

専門研修における魅力のひとつには、各診療科の専門医療に力を入れていることが挙げられます。当院は高度専門医療と救急医療に力を入れている病院であり、沖縄らしく、ジェネラル疾患を診られるスペシャリストを目標として専門研修を行っています。

指導医として心がけていることはどんなことですか

「医療は伝統芸能ではない」ということです。

医療の世界は「日進月歩」であり、覚える知識はどんどん増えていきます。つまり我々が教わったように教えていては、その進歩についていけません。3年で教わったことを2年で教え、残りの1年は医療の進歩に貢献できる期間にしなくてはいけないのです。

医療手技などは「見て盗め」ではだめで、覚える量も内容も働き方でさえ変わってくるのですから、我々指導医が持つ知識や技術を圧縮して、効率よく短期間で教えていかなければなりません。つまり、指導する側も常に成長・進化していかなくてはいけないということを心がけるようにしています。

どのような専攻医が育ってほしいと考えていますか

専門研修を終えた時点で全国どこの病院であっても、その学んだ基本が通用する、そういう医師になっていただきたい。現在の制度では、複数の病院で連携して専攻医を指導するという仕組みになっているので、当院で足りない部分があるのであれば他の施設に行って積極的に学んでほしい。そうして研修期間内で専門医としての基礎的な力を身に付けて次のステージに挑戦できる礎を築いてほしいと思います。

専門研修において大事なことは何でしょうか

専門研修は初期研修とは違います。自分が学ぶだけでなく、後輩の育成や勤務先の利益に貢献したりする必要があります。「研修」と名が付いていることで「学んで勉強することが仕事」と考える専攻医の方もいるかと思いますが、そうではなく、ひとりの社会人としての自覚をしっかり持ち、業務上の優先順位を考えながら働いてほしいと思います。

また、「この病気にはこの治療」ではなく、常に複数の選択肢を挙げてから、患者さんそれぞれが抱える背景や、施設に備わっている機器などさまざまなことを鑑みた上で、その状況下でのベストな治療法を決定する、という考え方を身に付けてほしいと思っています。

専門研修終了後のキャリアアップについて教えてください

当院において一部の診療科は大学人事なのでそれ以外の診療科についてお話しします。研修終了後はそのまま当院でスタッフ採用となるケースもありますが、これまでは枠が空いていないと採用できないというジレンマがありました。このジレンマを少しでも解消するために、今年度(2022年度)からフェロー制度というものをまずは内科で開始しました。これは、採用枠に空きがない場合でも審査を通れば1~2年間、当院で働くことができるというものです。専門研修後も当院で勉強したいと考えている方にとってはよい制度だと思います。現在は内科のみですが、来年度からは全診療科で開始しようと考えています。

また、院外での就労を希望する研修医に対しては可能な限り当院のパイプを使って就職を支援しています。診療科のベースができている研修医には専門に特化した、よりレベルの高い病院やハイボリュームセンターに行ってほしいという思いもあります。実際にがんセンターや大学病院などに繋いでいることもしばしばです。当院は県外から来ている専攻医も多く、大学医局へ入る場合にもスムーズにいくよう支援しています。

専攻医に支えてもらっているなと感じるのはどんなときですか

やはり、若さを生かした夜間・救急対応は頼りになります。

また、医局全体の雰囲気づくりに関しては初期研修医含め、専攻医の先生方の影響が大きいと感じています。多くのことを吸収しようという彼らの熱意や積極性は中堅・ベテラン勢にも刺激を与えてくれて、こちらもその熱意に応えていかなければと奮起しています。

今後取り組みたいこと、ビジョンなどあれば教えてください

先程申し上げたフェロー制度をできるだけ多くの診療科に拡げていきたいと考えています。

若手が増えることで病院全体が活性化するという面もありますが、これからは働き方改革の影響もあり、医師の確保ルートは多種多様であるべきだと思っています。また、当院だけで完結する研修ではなく、県内・全国の有力な医療機関とのパイプを強化してより良い専門研修を作っていきたいと考えています。

家ではどのように過ごしていますか

休日はもっぱら子供と遊んでいます。料理も好きなので朝は5時半に起きて子供の食事(弁当含む)を作っています。自分の所属する消化器内科では、日中は大変忙しいですが、定時で終わることをモットーにしています。これはオンコールによる緊急呼び出しが多い影響もありますが、自分の時間や家族との時間も大事にしたいので、定時に帰ってオンとオフを切り分けたメリハリのある生活を心がけています。